本の基本情報
著者プロフィール
●森岡 毅:1972年生まれ、兵庫県出身。神戸大学経営学部卒。96年、P&G入社。日本ヴィダルサスーン、北米パンテーンのブランドマネージャー、ウエラジャパン副代表などを経て、2010年にユー・エス・ジェイ入社。革新的なアイデアを次々投入し、窮地にあったユニバーサル・スタジオ・ジャパンをV字回復させる。12年より同社チーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)、執行役員、マーケティング本部長。著書に『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方』『確率思考の戦略論』(ともにKADOKAWA)
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本書の要点
- マーケティングの本質は、「売れる仕組みを作ること」。商品やサービスが消費者に選ばれるために、どのようにアプローチするかが重要であり、単に売ることではなく「売れるようにする」ことがマーケティングの役割。
- USJのV字回復の鍵は、映画に特化したテーマパークから、アニメやゲーム、その他のエンタメを取り入れた「セレクトショップ」型のテーマパークへと方向転換したこと。この戦略により、幅広い客層に支持される施設へと変貌を遂げた。
- 顧客目線の徹底が成功の要因。USJは、消費者の期待を超える体験を提供することで、リピート率と口コミを高めた。特に、モンスターハンターやハリーポッターの導入は、その象徴的な成功事例。
- 一点集中の重要性も強調され、限られたリソース(お金や時間)を最大限に活用するために、重要なプロジェクトに資源を集中的に投入することが推奨されている。
USJの成功を引き寄せたマーケティングの本質
USJの劇的な成功の裏には、独自のマーケティング戦略がありました。その本質は「売れる仕組み」を作り出すこと。つまり、商品やサービスを単に売り込むのではなく、消費者が自然に欲しいと思う状態を作り上げるということです。この考え方を実現するために、顧客の視点に立ち、彼らの期待を上回る体験を提供することが重要でした。これから、この成功に繋がる具体的な手法について見ていきます。
- マーケティングは「売れる仕組み」を作る
- 顧客目線の徹底
- 価値を上げて価格を正しく設定
マーケティングは「売れる仕組み」を作る
USJの成功は、マーケティングの本質を徹底したからこそ実現しました。森岡毅氏が強調するのは、マーケティングとは「売れる仕組み」を作ることであるという考えです。単なる商品やサービスの宣伝だけではなく、消費者が自然とそれを選ぶような環境や仕組みを整えることが必要です。
実際に、森岡氏がUSJに導入した戦略は、映画に特化したテーマパークからアニメやゲームといった幅広いコンテンツを取り入れることで、消費者にとって魅力的なテーマパークへと変貌させました。売り込むのではなく、自然に「行きたい」と思わせるような環境作りがポイントだったのです。この考え方を軸に、USJは売上を劇的に回復させました。
顧客目線の徹底
顧客の視点に立つことは簡単そうに見えますが、実は多くの企業が見落としがちなポイントです。USJの改革では、顧客の目線を徹底的に考え抜きました。たとえば、モンスターハンターやドラゴンクエストといった人気ゲームとのコラボは、ゲームファンの心を掴むための施策でした。森岡氏自身がそれぞれのゲームを何百時間もプレイし、ファン心理を理解した上でコンテンツを作り上げました。これにより、USJは若年層からも圧倒的な支持を受けるテーマパークになったのです。
さらに、顧客の意見を積極的に取り入れ、改善を続けることで、リピーターを増やし続けました。単なる体験ではなく、「もう一度行きたい」と思わせる仕掛けが、USJの長期的な成功を支えています。
価値を上げて価格を正しく設定
値段が高いか安いかよりも、顧客がその価格に見合う価値を感じるかが重要です。USJは、価格を上げることで逆に来場者数を増やすという戦略を取りました。これは、単に値下げで顧客を呼び込むという手法ではなく、提供するサービスや体験の価値を向上させ、その価値を理解してもらうことが成功のカギでした。
ハリーポッターのエリアは、その代表的な例です。450億円をかけたこのアトラクションは、チケット価格を大幅に上げたにもかかわらず、絶大な人気を集めました。顧客は、価値のある体験に対してお金を払うことを惜しまないという心理を見事に利用したのです。
映画専門からエンタメのセレクトショップへ
USJは当初、映画に特化したテーマパークでしたが、それでは限られた客層しか取り込めず成長が止まってしまいました。そこで、森岡毅氏が提案したのは、映画に固執せずにアニメやゲームなど多様なエンターテインメントを取り入れる「セレクトショップ型」のテーマパークへの転換でした。この変革により、映画ファンだけでなく、幅広い層から支持を集め、業績が劇的に回復しました。具体的にどのような施策が功を奏したのかを見ていきましょう。
- 映画のこだわりを捨てたUSJの変革
- アニメやゲームの導入で幅広い層をターゲット
- ハリーポッターの導入でV字回復を実現
映画のこだわりを捨てたUSJの変革
USJは開業当初、映画に特化したテーマパークとしてスタートしました。しかし、映画だけに固執していたことで、集客数が徐々に低迷していきました。2004年以降、入場者数は頭打ちになり、経営が危機的な状況に陥っていたのです。その原因は、東京ディズニーランドとの差別化に失敗していたことにありました。
当時、USJはディズニーランドとの差別化を図るため、映画に特化することで独自性を保とうとしていましたが、それでは限られた映画ファンしか引き込めませんでした。特に映画に興味のない子どもや家族連れからの支持は得られず、テーマパークの成長が鈍化していったのです。これに対して森岡氏は、映画の枠にとらわれない「エンターテイメント全般を楽しめる場所」への変革を提案しました。
アニメやゲームの導入で幅広い層をターゲット
USJは映画専門のテーマパークから脱却し、アニメやゲームなどの多様なエンターテインメントを取り入れる方針に転換しました。たとえば、人気アニメ「エヴァンゲリオン」や「進撃の巨人」とのコラボレーション、さらにはゲーム「モンスターハンター」「ドラゴンクエスト」とのコラボも成功を収めました。
これにより、映画ファンだけでなく、アニメやゲームファン、さらには若年層や家族連れなど、より幅広い層にアピールすることができたのです。この戦略的なコンテンツ拡充が、USJの再成長のカギとなり、集客数を劇的に増加させる大きな要因となりました。
ハリーポッターの導入でV字回復を実現
特に象徴的なのは、USJが2014年に導入した「ハリーポッターの魔法の世界」です。このアトラクションは450億円という巨額の投資を必要としましたが、その結果、USJはV字回復を遂げました。ホグワーツ城やホグズミード村がリアルに再現され、来場者はまるで映画の中に入り込んだような体験を味わうことができました。
このアトラクションは映画ファンだけでなく、魔法の世界に憧れる子どもたちやファンタジー好きの大人たちにも支持され、瞬く間に大人気となりました。USJの来場者数は急増し、売上も飛躍的に伸びました。ハリーポッターの導入は、USJの成功を象徴する施策の一つとして語り継がれています。
顧客目線を徹底したUSJの改革
USJがV字回復を成し遂げた背景には、顧客目線を徹底した施策がありました。商品やサービスが消費者に本当に求められているかをしっかりと把握し、その期待を上回るものを提供することが成功のカギとなりました。USJは、ゲームやアニメファンの心理を理解し、エンターテインメントとして何を提供すれば良いかを徹底的に研究し尽くしました。次に、その具体的な施策を見ていきましょう。
- お客様目線を考える難しさとその重要性
- 999時間プレイ!ゲームファンの心理を理解
- 消費者の期待を超える体験を提供する
お客様目線を考える難しさとその重要性
「お客様目線」という言葉はよく耳にしますが、実際に徹底するのは非常に難しいものです。なぜなら、企業側が「お客さんはこう考えているだろう」と推測することと、実際の顧客の考えは異なることが多いからです。USJでも最初は映画好きの大人をターゲットにしていましたが、そのアプローチだけでは限界がありました。
USJのマーケティング責任者である森岡毅氏は、この問題を解決するために、ターゲット顧客にどのようなコンテンツが本当に求められているのかを細かくリサーチしました。この結果、アニメやゲームの導入を決定し、若年層や家族連れといった新たな層を取り込むことに成功したのです。顧客目線を徹底することで、今までUSJに興味を示さなかった人々にも魅力的なコンテンツを提供できました。
999時間プレイ!ゲームファンの心理を理解
USJが人気ゲーム「モンスターハンター」をテーマにしたアトラクションを導入する際、森岡氏はそのゲームを徹底的にプレイしました。なんと、999時間以上を費やしてプレイし、ゲームファンがどこに魅力を感じるのか、どうすれば彼らに喜んでもらえるかを体感したのです。このように、ただ表面的な調査だけではなく、実際に自分が消費者としてその体験を味わうことで、より深い顧客理解が得られました。
この努力によって、ゲームファンの期待を正確に把握し、アトラクションとしてどう具現化すれば喜ばれるかを明確にしました。森岡氏のこの徹底的な顧客目線の姿勢が、USJの成功に大きく寄与したと言えます。
消費者の期待を超える体験を提供する
USJが成功したもう一つの要因は、顧客が期待する以上の体験を提供することに徹底してこだわった点です。USJのアトラクションやイベントは、単に「楽しい」というレベルではなく、「想像以上にすごかった」と感じてもらうことを目指しました。これにより、一度来場した顧客が再び来たくなる「リピーター」を増やすことに成功したのです。
例えば、USJのハロウィンイベントでは、単に仮装やお化け屋敷を楽しむだけでなく、ゾンビがパーク内を自由に歩き回るリアルな演出を採用しました。これによって、来場者はまるで映画の中にいるような恐怖と興奮を体験でき、SNSで話題になりました。口コミで広がり、さらに多くの人々がUSJに足を運ぶようになったのです。
認知からリピートまで、売れる仕組みの構築
「売れる仕組み」を作るために重要なのは、まず顧客に「知ってもらう」ことです。しかし、知ってもらうだけでは終わりません。その後も、良いイメージを持ってもらい、さらにリピーターとして繰り返し足を運んでもらえるようにすることが成功のカギとなります。ここでは、USJが実際に行った施策をもとに、認知からリピートまでのプロセスを解説していきます。
- まずは「知ってもらう」ことが重要
- 良いイメージを植え付けるマーケティングの真髄
- 口コミで広がる満足度を超える体験の提供
まずは「知ってもらう」ことが重要
どんなに優れた商品やサービスでも、顧客に知られていなければ売れることはありません。USJの改革の第一歩は、まず「知ってもらう」ためのマーケティングを徹底的に行ったことでした。新しいアトラクションやイベントを通じて、既存の顧客層だけでなく、これまでUSJに興味を持たなかった層にもアプローチしました。
そのために、テレビCMやSNSでの広告戦略を巧みに利用し、多くの人にUSJの変化を伝えることに成功しました。この段階では、USJのことを少しでも知ってもらうことが最優先事項です。その結果、来場者数は徐々に増加し、SNSを中心に話題性が広がっていきました。ここからUSJのV字回復が始まったのです。
良いイメージを植え付けるマーケティングの真髄
ただ知ってもらうだけではなく、次に重要なのは「良いイメージ」を植え付けることです。顧客が商品やサービスを選ぶとき、そのブランドや会社に対して抱いているイメージが大きな影響を与えます。USJでは、消費者がテーマパークに抱くイメージを変えるために、さまざまなマーケティング戦略を展開しました。
かつてのUSJは「関西の映画専門のテーマパーク」というイメージが強く、特定の客層にしかアピールできませんでした。しかし、アニメやゲームなど、さまざまなエンターテインメント要素を導入することで、「誰もが楽しめるエンターテインメントの宝庫」というイメージに変えることができました。これにより、家族連れや若者層を取り込み、全世代が楽しめる施設としての認知を広げていったのです。
口コミで広がる満足度を超える体験の提供
顧客にリピーターになってもらうためには、最初の体験で「期待以上」の満足を感じてもらうことが不可欠です。USJでは、来場者が「また行きたい」と思うような特別な体験を提供することに全力を注いでいます。ハロウィンイベントでは、リアルなゾンビがパーク内を歩き回るというユニークな演出が行われ、来場者に強烈な印象を与えました。
このような特別な体験は、SNSで多くの話題を呼び、口コミでさらに広がりました。結果として、一度訪れた顧客が友人や家族にUSJの魅力を伝え、次々と新たな来場者を呼び込む好循環が生まれました。口コミを通じた広がりは、広告費をかけずに集客を増やす強力な手段であり、USJはこの効果を見事に活用しています。
当てずっぽうで動かない!データ重視の重要性
USJが成功を収めた一因は、計画的に行動することに徹した点です。顧客のニーズを正確に把握し、それに基づいたデータ分析をもとに、戦略を練っていくことが重要でした。何も考えずにイベントを打ち出すのではなく、事前に徹底した情報収集を行い、狙いを定めた施策を講じました。次に、そのデータ重視の具体例について解説していきます。
- 事前に顧客のニーズを把握する戦略
- ストレス発散ニーズに応えたハロウィンイベント
- 資源を集中させた結果、USJは東京ディズニーランドを超えた
事前に顧客のニーズを把握する戦略
顧客のニーズを正確に把握し、それに基づいた戦略を立てることは、マーケティングで成功するための基本です。USJは、どのようなイベントやアトラクションが顧客を引きつけるのかを、データを通じて深く理解しました。若い人々が何に興味を持っているのか、ストレスをどのように発散したいと思っているのかなど、詳細な調査を行ったのです。
この結果、USJは、単に映画ファン向けのテーマパークから、アニメやゲーム、さらにはリアルな体験を提供するパークへとシフトしました。具体的な調査結果に基づいて行動したことで、狙ったターゲット層を的確に捉えた施策が次々とヒットし、成功を収めたのです。適切な情報収集が、すべての成功の土台となっています。
ストレス発散ニーズに応えたハロウィンイベント
USJのハロウィンイベントは、その成功の象徴とも言えるイベントです。なぜなら、これもデータ分析から生まれた施策だからです。調査によると、若い世代の多くが日常のストレスを発散したいというニーズを抱えていることがわかりました。このデータに基づき、森岡毅氏は「叫んでストレスを発散できるイベント」を考案しました。
その結果、パーク内にリアルなゾンビを解き放ち、来場者がまるで映画「ウォーキング・デッド」の世界に入り込んだかのような体験を味わえるイベントを開催したのです。このイベントは大成功を収め、2015年のハロウィン期間中には東京ディズニーランドを上回る集客数を記録しました。これは、顧客のストレス発散というニーズを的確に捉えたことが要因です。
資源を集中させた結果、USJは東京ディズニーランドを超えた
さらに、USJは限られたリソースを最大限に活用するために、資源を一点集中させました。ハロウィンイベントやハリーポッターのアトラクションに巨額の投資を行い、他の施策に分散させるのではなく、確実に効果が見込めるものに集中させたのです。これが、短期間で大きな成功を収めた理由の一つです。
2015年には、10月の集客数が175万人に達し、関東地方からも多くの来場者が訪れる結果となりました。これは、東京ディズニーランドの集客数を上回るものでした。戦略的な資源配分が、USJを日本トップクラスのテーマパークに押し上げたのです。
資源を一点集中させるマーケティング戦略
USJのV字回復を実現するためには、限られた資源を効率的に使うことが欠かせませんでした。お金や人材、時間といった経営資源をどこに集中的に投じるかを慎重に判断し、無駄なリソースを徹底的に削減したのです。これによって、USJは限られたリソースの中で最大の成果を上げることに成功しました。では、どのように資源を使い、どこに集中させたのかを具体的に見ていきましょう。
- スティーブ・ジョブズも実践した「無駄を捨てる」戦略
- USJが450億円を投じたハリーポッターアトラクション
- 資源集中の重要性はあらゆるビジネスに通じる
スティーブ・ジョブズも実践した「無駄を捨てる」戦略
資源を無駄なく活用するための一つの戦略が「選択と集中」です。この手法は、アップルのスティーブ・ジョブズも実践していた方法で、USJもこの考えを取り入れました。ジョブズはアップルに復帰した際、多くの製品ラインを廃止し、限られた資源を「iMac」や「iPhone」などの核心的なプロジェクトに集中させました。USJも、業績が低迷していた当初、余計な施策やリソースを削減し、戦略的に重要な部分に資源を注ぎ込むことを選びました。
森岡氏は、全てに手を広げるのではなく、「本当に必要なところ」に集中させることが企業を成功に導く最善策だと強調しています。これによって、USJは最小限のリソースで最大限の効果を得ることができたのです。
USJが450億円を投じたハリーポッターアトラクション
USJが成功を収めた一番の要因は、やはり「ハリーポッターの魔法の世界」の導入でしょう。これは、450億円という巨額の投資がなされたプロジェクトです。しかし、この莫大な資金は決して無駄ではありませんでした。森岡氏は、ここに全力を集中させたことで、USJのV字回復を実現しました。
「ハリーポッターの魔法の世界」は、単なるアトラクションではなく、訪れた人々に魔法の世界に入り込んだような没入感を与えるものです。リアルなホグワーツ城やホグズミード村の再現は、映画ファンだけでなく、初めての来場者にも強烈なインパクトを与えました。これにより、USJは一気に集客数を伸ばし、売上も急上昇。大きな投資が見事に報われた瞬間でした。
資源集中の重要性はあらゆるビジネスに通じる
USJのケースは、単なるテーマパークの成功事例にとどまらず、あらゆるビジネスに通じる教訓です。限られたリソースをどう使うか、どこに集中させるかは、どんな事業でも避けては通れない重要な決断です。成功する企業やプロジェクトは、常に「やらないことを決める」ことで、大事な部分に全力を注いでいます。
「捨てる勇気」を持ち、資源を一点に集中させることは、効率的かつ効果的に成果を上げるための基本です。USJはこの原則を忠実に守ることで、見事に業績を回復させました。どんなビジネスにも応用できる戦略として、ぜひ参考にしてほしいですね。
ライバルとの差別化に成功したUSJ
USJが東京ディズニーランドという巨大なライバルに対抗して成功したポイントは、ディズニーにはできないことにフォーカスしたことです。映画やアニメ、ゲームといったコンテンツのコラボレーションを行い、ディズニーランドとは異なる魅力を打ち出しました。結果的に、USJは「唯一無二のエンターテインメント」を提供する場所として、ファン層を拡大させました。それでは、具体的にUSJがどのように差別化を図ったのかを詳しく見ていきましょう。
- ディズニーランドとの差別化で差を生かす
- ゲームや漫画とのコラボで独自路線を展開
- 進撃の巨人やバイオハザードで新しい客層を獲得
ディズニーランドとの差別化で差を生かす
USJが成功を収めた要因の一つは、東京ディズニーランドとの差別化戦略です。ディズニーランドは「夢と魔法の王国」というブランドイメージを大切にしているため、ゾンビやホラー要素を取り入れることができません。しかし、USJはその制約がないため、自由に多様なコンテンツを取り入れることができました。この違いを巧みに利用し、他のテーマパークでは体験できない独自のエンターテインメントを提供することが可能になったのです。
たとえば、USJは「進撃の巨人」や「バイオハザード」といったホラー要素や大人向けのアトラクションを取り入れ、映画ファンだけでなく、アニメやゲームのファンも呼び込むことに成功しました。これが、ディズニーランドとの差を強みに変えた瞬間でした。
ゲームや漫画とのコラボで独自路線を展開
USJはまた、人気ゲームや漫画とのコラボレーションを積極的に行うことで、新たなファン層を取り込みました。「モンスターハンター」や「ドラゴンクエスト」といった大人気ゲームとのコラボは、特に若年層やゲームファンに大きなインパクトを与えました。
この戦略が成功した理由は、アトラクションが単にゲームや漫画の世界観を再現するだけでなく、訪れたファンが実際にその世界に入り込んだかのような体験を味わえる点にあります。これにより、映画以外にも楽しみを提供し、ゲームファンや漫画ファンにとっても魅力的なテーマパークとしての地位を確立しました。USJは、従来の枠を超えたエンターテインメントを提供し続けることで、差別化に成功したのです。
進撃の巨人やバイオハザードで新しい客層を獲得
「進撃の巨人」や「バイオハザード」などのホラー要素を取り入れることで、USJは大人向けのアトラクションも充実させました。これにより、子ども連れの家族だけでなく、若者や大人の観客もターゲットにしたエンターテインメントを提供できるようになりました。
特に「バイオハザード」は、その緊張感溢れるアトラクションが話題となり、多くのホラーファンやゲームファンに注目されました。これにより、他のテーマパークでは味わえないスリルや興奮を提供し、新たな客層を開拓することができたのです。このような新しいコンテンツの導入が、USJの集客力をさらに高める結果となりました。
値段を上げても売れる理由とは?
USJが成功した理由のひとつには、単純に価格を下げて集客を狙うのではなく、あえて価格を上げても価値を提供するという逆説的な戦略があります。このアプローチは、消費者に対して「安いものより価値のあるものを選びたい」と思わせるものでした。価格が高くても、消費者がそれに見合うと感じるならば、むしろ購買意欲を高めることができます。次に、具体的にどのような方法で価格と価値のバランスを取ったのかを見ていきます。
- 価格ではなく価値を重視するマーケティング
- 値上げで利益を確保し、さらなるサービス向上へ
- 安売り競争に走らないマーケティングの強さ
価格ではなく価値を重視するマーケティング
USJがチケット価格を上げるという選択をした背景には、単に安くして集客を増やすのではなく、価格に見合う「価値」を提供するというマーケティング戦略がありました。この考え方は、消費者が価格よりも体験やサービスの質を重視するという心理に基づいています。
たとえば、USJが投入した「ハリーポッターの魔法の世界」や「ハロウィン・ホラーナイト」のような特別なイベントやアトラクションは、消費者にとって非常に価値のある体験でした。消費者は「ただ楽しい」だけでなく、「期待以上の体験」を求めています。これにより、チケット価格が高くても「行ってみたい」と思わせることに成功したのです。
値上げで利益を確保し、さらなるサービス向上へ
USJはチケット価格を単純に値上げしただけではなく、その値上げによって得た利益をさらにアトラクションやサービスの向上に投資しました。価格を上げることで得た資金を新しい体験に変えるという戦略は、消費者にとっても納得感があります。
この利益再投資のサイクルによって、USJは新しいアトラクションやイベントを次々に開発し、さらに消費者を引きつけるようなテーマパークへと成長しました。価格の上昇は一時的なデメリットかもしれませんが、それ以上に提供される体験が充実していくことで、むしろリピーターが増えていく結果になったのです。
安売り競争に走らないマーケティングの強さ
価格を下げることは簡単ですが、長期的な利益にはつながりにくいというリスクがあります。USJは「値下げ競争」には走らず、むしろ価格を上げてでも価値ある体験を提供する道を選びました。この戦略は、単に価格だけを見ている消費者ではなく、体験の質やその背後にある価値を求める層に響きました。
特にテーマパークのように、一度訪れるとリピートしやすい業界では、安売りによる一時的な集客よりも、長期的なブランド価値の向上が重要です。USJはこの点をうまく捉え、値下げ競争に巻き込まれることなく、自分たちの強みを活かした価格戦略を展開しました。これがUSJの持続的な成功を支える一つの柱になっているのです。
USJの成功に学ぶマーケティングの本質と実践方法
今回の記事では、「USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門」の要約と、マーケティング成功に必要な戦略について解説しました。この記事のポイントをおさらいしましょう。
- 顧客目線を徹底して理解する
- 資源を集中させて成功を引き寄せる
- 価格ではなく価値を提供する
これらのポイントをしっかり実践すれば、ビジネスの成長が見込めます。自分の状況に合わせて取り入れてください。本書を読んで、自分のビジネスに応用できる戦略を学んでみてください。
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